劇団 のあ 第20回  記念公演 
  

 

−おおまがもり−   作: 虎林はんじん

深い森。

古来から、魔物が住むと恐れられる夜の森。
ゆらめく焚き火の炎に見え隠れする真実とは……?

乗っていた車が故障し、この森に迷い込んだ一組のカップル「ヨシオ」と「アケミ」。
二人は、森の中で郵便配達人の「ヤマモト」と出会う。
リストラにより職を追われ、これが最後の配達だというヤマモトの持つ一通の手紙には、
ある忌まわしい事件が隠されていた……。

僕タチハ 何ヲ 信ジテ 行クノダロー


 

 ちょっとオッサン、帰り道を教えなさいよ!
 夜の森を歩き回るのは危険です。
 今夜は、ここで夜明けを待った方が良い。

 

 約束?約束って何だっけ?
 指切りゲンマン。
 約束して。あの日の約束、忘れないって。
 

 ホラ、これ美味しそうな色してるでしょ!?
 ホントだァ、美味しそうな色!
 こういう赤いのが旨いんですよー。

 

約束って何だっけ……?

 

 あーっ!それ入れちゃダメだって!
 フフフ、かき混ぜたらあとは待つだけね。
 何だか、楽しい夜になりそうだなァ。



 

 (その手紙には事件の経緯と、その後の
  サチコの消息が書かれていた。
 ヤマモトは、手紙を読んで全てを理解した。)

 

 じゃあ、約束ね。
 うん、約束だよ。
 じゃあ、指切りしよ。(二人は指切りをする。)
 

 私、中学を卒業したら看護婦になるんだ。
 町の大きな病院で、住み込みで働くの。
 そう。偉いなァ、サッチャンは。

 

 

 僕は全てを思いだした……君を殺したのは
 僕なんだ。深くて冷たい河に、君を突き落とした
 んだ……ゴメンよ、サッチャン。僕を許して……

 

 
 
 嫌、来ないで!それ以上近づかないで!
 そこは危ないぞ。さあ、こっちへ来い。
 先生の胸に飛び込んでおいで!!
 

 

 

 (サチコはヨシオを助ようと、イトウに掴みかかる)
 ぐぁ〜!! (イトウのかつらが外れ、サチコは
 勢い余って河へ転落した)
 

お前はになるんだ。私の手の、この透明なガラス瓶の中で蒼い蝶にね。
  音もなく風も なく、ただ、東の空に昇る満月の光だけが時を刻む静寂の世界で、
  永遠の命を私と生きるんだ……。
 さあ、私に、お前の蒼く光る羽を拡げて見ておくれ。
  その厭らしく美しい羽で、私を優しく包んでおくれ。
  そしたら、ご褒美に甘いをたっぷりと、お前に与えよう……。


 

 お願いです、この手紙を届けて欲しいんです。
 そう言われても困るんですよ。規則ですので。
 どうしてもダメですか……。

 

 

 そうだったのか!サッチャンは生きていたのか!
 良かったねヨッチャン。アンタ人殺しじゃなかった
 んだ。良かったね!!

 

 

 じゃあね。ホントに色々ありがとう。
 さよなら。気をつけて行きなさい。仲良くね。
 うん。郵便屋さんもガンバってね。

 

 

 さてと、最後の無事終了か…。アレ?鈴だ。
 (鈴を拾って、不思議そうに鳴らしてみる)
 ホントに、色んな物が落ちてるなァ。

忘れないでね…

私のこと、忘れないでね。

 

 (そして、ヤマモトは朝日の中へ帰って行く)

Fin


あの日の約束、

決して忘れないでね……。




 
       公演日 : 2002年 4月27日(土) 19:00〜(1公演のみ)

   会 場 : 柏崎エネルギーホール 

   演  出     虎林 はんじん        出  演   ヨシオ   山崎  和則

   舞台監督    小林 ゆうこ               サチコ   山岸 しのぶ

   照  明     じーぱん                 アケミ   つなしまゆみ

   選曲・音効  萩野 知巳                ヤマモト  阿部  新一

   特殊効果    ゴジラ☆松井               イトウ  虎林 はんじん

   制  作    新熊 友子・前川 京子

 







       


    

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