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その森に、女はひとり佇んでいた。
咲く花もなく、鳥さえもいない、荒れ果てた森だった…。
それでも女は種を植えた。
いつか降る豊穣の雨を待ちながら……。
   
その町に、男はひとり立ち尽くしていた。
ただ日々の糧を得るためにひざまずく…。
それでも男は探し続けた。
いつか無くした "ただひとつの希望"を……。


貧しい靴磨きの青年と、ひとりの娼婦をめぐる妖しくて
悲しい、大人のための童話。

 



花姚記 (ドラマ・リーディング公演)             TOUROU



コーリャン畑に吹く風の音を聞いたことがあるかい?
空まで高く延びた、蒼いコーリャンを揺らして吹き抜ける風の音を。
  ヒュー、ザワザワ、ヒュー。
懐かしいその音も、この町では聞こえない。

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高くそびえるのは蒼いコーリャンじゃなくて、赤茶けた煉瓦の山。
大通りを吹き抜ける風は、女の白粉の臭いが混じった、いがらっぽい風だ。
すえたドブの臭いが渦巻くこの町の通りで、オイラは跪いて靴を磨く。
市場には物が溢れ、何でもあるこの町。
なのに、オイラの居場所は見つからない・・。

 
ヒュー、ザワザワ、ヒュー。

本当に大切な物は、みんな故郷の草むらの中・・・。

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私はいつもこの森に来る。
小さな泉と、大きな切り株と、崩れ落ちた白い洋館の壁。
私はいつもこの場所に腰掛けて、幸せだった少女の時を思い出す。
あれこれと懐かしい思い出を辿りながら、私はいつも、ひとつの言葉を繰り返す。
     
                                  「さよなら」と。

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そして私は大地にひざまずき、穴を掘り、種を植える。
小さな 幸いの種を。
ささやかな種のささやかな物語。
夕暮れが足音もたてずに忍び寄り、西の空に蒼い月が昇る頃、
ヒグラシの声に混じって、あの人が私を呼ぶ声が聞こえて来る・・・。



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オイラは手を伸ばす。
雲に向かって、夢中で手を伸ばす。
大地を踏みしめる。
空はどんどん高く澄みわたり、やがて、見渡す限り群蒼の蒼に満たされて行く。

 ・・・届かない。

オイラのポケットから落ちたビー玉は、広いコーリャン畑に転がって、
そしてオイラは、薄れて行くメイホァの面影を、
ただぼんやりと見送るしか無かったんだ・・・。




参考文献:寺山修司 作 私窩子より「花姚記」






 第10回 柏崎演劇フェスティバル参加作品

平成16年1月31日(土)  19時〜 (1回公演)


 
出  演

山岸 しのぶ           寺尾 健夫
山崎 和則        虎林 はんじん

友情出演 : ホセ 山崎


作・演出: 虎林はんじん
舞台監督: しんくまともこ
照 明: じーぱん
音響: 萩野知己、ゆでたまご
メイク: 五十川直子
制 作: こばやしゆうこ




       

  

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