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![]() へ向かっていました。黄色の電燈のならんだ客車を引いて、赤や青やだいだい色を ちりばめた美しい夜空を進んでいるのです。空のすすきの風にひるがえる中を、 天の川の水や、三角点の青じろい光の中を、どこまでもどこまでもと走って行くのです。 青い天蚕絨(びろうど)を張った腰掛けが、まるでがら空きで、向うの鼠色のワニス を塗った壁には、真鍮の大きなぼたんが二つ光っているのでした。 ガタンゴトン、ガタンゴトン、ガタンゴトン。夜に向かう汽車。 僕はなんだかとても切なくなって、何か忘れ物がある気がして、思い切って車掌さん に聞いてみました。 「僕は、どこへ行ったら良いのですか」 と。 |
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「お帰りなさい!」 ![]() …私はいつもそう言うの。 夕暮れの丘をあなたが帰って来る。 ドアが開くのを待ちきれず私はいつも繰り返す、「お帰りなさい」って。 でも、あなたはいつもこう答えたわ…「ああ」。たった一言「ああ」とだけ…。 それでも私は幸せだった。夕日が好きだった。春の風が好きだった。 マグノリアの花の香りがする夕暮れのベランダで、あなたを待っているのが好きだった。 「…でもいつか、この指をすり抜けて、幸いの砂がこぼれてゆくのかしら?」 私がそのことをあなたに言うと、あなたはぼんやりと笑いながら、こう言いましたね。 「それは仕方の無いことだよ。だって、運命の砂時計は、もうとっくに動き出してしまった んだからね」…と。 | |
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